風蘭について
榊莫山氏の本『フウラン』より
蘭を愛する人は多いと思います。世界中に凄い数の種類があるとか。蘭は暖かい地方に自生しています。我が日本に於いても、二百数十種あるそうで、春蘭・寒蘭・フウラン・セッコク・エビネ等が好まれました。風蘭は園芸品種となり、多種多様な芸を発揮いたしまして、『風貴蘭銘鑑』に登場し、ブームと言いますか、流行があったのでございます。
風蘭の鑑賞は江戸時代より始まったらしく、特に文化・文政・天保期は将軍徳川家斉さんでありますが、このお方が大の趣味人であり、将軍の趣味がやがて諸国の大名にも広まったようで、藩中の珍種を探すことになったそうで、いやはや、想像を絶する将軍や大名のフウラン好みの絶頂に達したとか。明治維新の動乱は太平の世の悠長な園芸どころではなく、ブームも静まったそうです。しかし、明治の文明開化が軌道に乗るにつれて、愛好家が増え始め、明治六年に、相撲の番付にならって、東西に六十五種のフウランを配したランク付けがあるそうでございます。
昭和に入りまして十年ごろ、約百五十種、十五年はブームの頂点とか。このあと日中戦争の始まりと、今次の大戦のため、国中は戦争色一色に塗りつぶされ、フウラン作りも影をうすめていきました。昭和二十年の敗戦後、二十二年名古屋で再興の会が開かれたそうですが、ボチボチという感じでありましたが、昭和四十七、四十八年頃、大阪で『風蘭美術展』では二百名近く愛好者が参集。昭和四十九年にはNHKのテレビで「趣味の園芸・フウラン」が放送され注目を集めたようであります。
(以上、著名な書道家、榊莫山氏の本『フウラン』よりかいつまんで説明)

私も趣味人の仲間入り
私も何とか趣味人の仲間入りをいたしまして、昭和四十五年(二十六歳)に一つ、二つと買い求めておりましたが、転勤にてそれらを処分。昭和五十年吹田に定住するようになり、再開したのでありますが、その頃は高価でありました。
昭和五十年、大阪阪急三番街の園芸店のフウランの値段が記録されていますが
・轡虫(一本付) 十八万円
・紫宸殿(二本立) 十五万円
・天恵覆輪(二本立) 三万五千円
・大波青海(一本立) 二万五千円
・青海(小一本立) 四万5千円
(前の榊莫山著『フウラン』人と園芸 NHK趣味の園芸 昭和五十一年発行)

この頃のサラリーマンにとって、手も足もでない値段でした。たしかこの頃、この店で御城覆輪(四本立ぐらい)を二万五千円ぐらいで買った思い出があります。その後、機会あるごとに買い求めている内に数が増えて、あれが欲しい、と思っている内が「花」で、蘭は成長しますと子供が生まれますので、数が増えます。又、次々と新しい品種は出てきますが、古い物は数が増えて、今では値段はこの頃と比較にならない程下がっており、愛好者も少なくなっているのでは。
最近では日本の古典園芸よりも外国のガーデニングに好みは移っているようで・・・「正に趣味の多様化」でございます。「園芸」というのも一つの芸事ですので、身に付ける事は悪い事ではないと思います。「芸は身を助ける」なんて事を聞いた事がありますが、すべからく芸は人生の価値の一つではないでしょうか。
万事、芸事は「よき師」が必要かと、今七十四歳でそんな気がいたします。趣味や同行の友はよき友で、人生の一つの楽しみかもしれません。
フウランのこと/管理等 ※ 園芸種の場合は『富貴蘭』と申します
①置き場所 日陰 チラチラ光が入る
強い日光はダメ、光の好き嫌いは品種にもよる
②ザブンと水、カラカラが好き
いつもジメジメを嫌います
③風通しが良いこと
まさに風ラン、木の上に着いて生きてきたのです
④肥料 やりすぎない
マグアンプの小片を数個水ゴケの内に、水肥(ハイポネックス)を数度、うすく倍率に注意
⑤植え替え
年に一度、桜のつぼみがまだ開くまでに。初心者には少しむつかしいかも。
◎花の香り スバラシイ 特に夕方
なぜか?よくわからない。おそらく虫を誘うためか、蘭には密を出す種もあります。
◎たまに種ができる
これで発芽する事はないようです。
◎地上に置くとナメクジに根を食われる。
葉に虫がついたり、花芽がかじられたり、、、色々あります。
でも鉢植でも、水がきれても少々は大丈夫。
どの園芸品種でも種類は多いですが、風蘭は個性的でおもしろい。我々人間もそうかもしれませんが。「花鳥風月」などと言いますが、ますます科学技術が加速的に変化する時代に、自然と親しむ事は心の安らぎ、楽しい事であると思います。
追加説明 令和三年二月吉日
・蘭は元々熱帯、亜熱帯の植物です。寒さに少し弱い(5℃以下)。
・氷点下になり、根に水分があり、凍ると危険。
・冬場は玄関か廊下に。特に水分は不要、逆に温暖な所で冬を越して春に外に出すと元気がなくなる(温室育ち)。
・カラカラであれば室外でも可、園芸の品種は(上品な方は)やはり弱い。
・私は十二~二月、暖かい日に霧吹で一日で乾くぐらいの水分を与える。
時代の流れか、我国の古典園芸、蘭・菊・万年青・盆栽・山野草等の愛好者が少なくなったのかも知れません。
中国では「四君子」と言って「君子のように気品が高く風格があることを言う」ラン、タケ、ウメ、キク(広辞林)
新しい環境に馴染んで花を咲かせて、すばらしい芳香を人知れず風に乗せてくれる事でしょう。室の鴨居の上の欄間は飾りではありますが、風を通す他、お香や蘭の香の通り道であったのかも知れません。
”フウラン”を愛する気持ちは変わっていませんが、子供が増え植え替え等、手間をかける事が少ししんどくなってきました(七十七歳)

